設計経緯
ワコールは「女性が美しく装える平和な社会こそ理想」という創業理念のもと、文化活動を重視してきた企業です。
その中で文化センター構想が立ち上がり、1980年、社会学者・加藤秀俊氏の紹介により槇文彦氏へ設計が依頼され、スパイラルの設計が始まりました。
創業者・塚本幸一氏は槇氏に対し、「どこにもないものをつくってほしい」という依頼だったそうです。
設計構想
槇氏はこの言葉を受け、モダニズムのイコンを散りばめ、まったく新しい建築像を目指しました。
円柱・円錐・キューブといった見慣れた幾何形態を断片的に組み合わせ、全体としては未見の建築へと昇華させてます。
また、青山通りの喧騒から一歩入ると“都市の孤独を楽しむ空間”が広がるよう、静けさを意識した内部環境が構想されました。
スパイラルの誕生
敷地は幅30m・奥行60mの細長い形状で、奥40mは住居地域のため高さ制限がありました。
この制約の中で人を奥へと誘導する方法を検討した結果、トップライトから光が落ちるアトリウムと螺旋スロープという空間構成に至ったそうです。
またライト建築にみられる「低く入って内部で大きな空間に出会う」という技法を取り入れ、スパイラルでも入口付近のエントランスホールの天井は低く、奥のアトリウムは吹き抜けの構図を採用しています。
文化センターとしての位置づけ
塚本氏はアーティストを“支援する”のではなく、“パートナーとして文化を事業化する”という姿勢を持っていました。
その思想のもと、スパイラルは美術館でもギャラリーでもない、敷居の低い新しい文化拠点として計画されています。
8,9階のサロン
8・9階はワコールが自社で運営するサロン空間で、天井の造形が特に美しいです。
内部写真は東京建築祭2026での見学時に撮影したものです。